不動産投資を行う際に、最も重要な指標の一つが「利回り」です。
利回りを計算することで、その物件がどれくらいの収益を生み出す可能性があるのかを数値で把握できます。
しかし、利回りにはいくつかの種類があり、それぞれ計算方法や活用の仕方が異なります。
本記事では、不動産投資における利回り計算の基本から、具体的な計算方法、さらには利回りを活用した投資判断のポイントまで詳しく解説します。
初心者の方でも理解しやすいように、丁寧に解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
不動産投資の利回り計算とは?基本を解説

不動産投資における「利回り計算」とは、投資した金額に対してどれだけの収益が得られるのかを示す指標です。
利回りを正しく把握することで、物件の収益性を客観的に評価でき、投資の成功率を高めることができます。
利回り計算の目的とは
不動産投資において、利回り計算を行う目的は以下の通りです。
- 収益性を数値で可視化:物件ごとの収益を具体的な数字で評価し、比較できる。
- 投資リスクを事前に把握:高利回りでもリスクが高い場合があるため、適切なリスク管理ができる。
- 融資審査での重要な指標:金融機関から融資を受ける際に、利回りが高い物件ほど評価されやすい。
利回りを計算することで、投資物件の価値を適切に判断し、安定した収益を得るための戦略を立てることができます。
不動産投資における利回りの種類
不動産投資における利回りには、大きく分けて以下の3種類があります。
- 表面利回り(グロス利回り):年間家賃収入を物件価格で割った単純な計算式。経費を考慮しないため、実際の収益とは異なる場合がある。
- 実質利回り(ネット利回り):管理費や修繕費、税金などの経費を差し引いた後の利回り。より現実的な収益性を示す。
- キャッシュフロー利回り:ローンの返済額を考慮し、実際に手元に残るお金をベースに計算する利回り。長期的な投資戦略に役立つ。
これらの利回りを正しく理解し、目的に応じて使い分けることが、不動産投資の成功につながります。
利回りを計算することで得られるメリット
利回りを計算することで、以下のようなメリットがあります。
- 物件の収益性を正確に評価できる:事前に収益性をシミュレーションすることで、失敗のリスクを低減できる。
- 複数の物件を比較しやすい:異なるエリアや価格帯の物件を、数値で簡単に比較できる。
- 資金計画を立てやすくなる:キャッシュフローを考慮することで、ローン返済や運用コストの管理がしやすくなる。
特に、初心者の方は表面利回りだけでなく、実質利回りやキャッシュフロー利回りも含めた総合的な視点で判断することが重要です。

不動産投資の利回り計算で重要な3つの指標

不動産投資の利回り計算では、以下の3つの指標が特に重要です。
それぞれの特徴や計算方法を理解し、適切に活用しましょう。
表面利回り(グロス利回り)
表面利回りは、不動産投資の基本的な指標であり、最も簡単に計算できる利回りです。
物件購入前の目安として使われることが多く、投資判断の第一歩となります。
表面利回りの計算式は以下の通りです。
表面利回り(%) = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 物件価格:2,000万円
- 年間家賃収入:120万円(月10万円)
この場合、表面利回りは「120万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 6%」となります。
ただし、表面利回りには管理費や修繕費、空室リスクが考慮されていないため、実際の収益とは異なることを理解しておく必要があります。
実質利回り(ネット利回り)
実質利回りは、管理費や修繕費、税金などの経費を差し引いた後の利回りです。
より現実的な収益性を示し、長期的な投資判断に役立ちます。
実質利回りの計算式は以下の通りです。
実質利回り(%) =(年間家賃収入 - 年間経費) ÷ 物件価格 × 100
例えば、年間経費が30万円かかる場合、先ほどの例では次のように計算されます。
(120万円 - 30万円) ÷ 2,000万円 × 100 = 4.5%
表面利回りが6%だったのに対し、実質利回りは4.5%となり、実際の収益が低くなることが分かります。
キャッシュフロー利回り
キャッシュフロー利回りは、ローンの返済額を考慮し、手元に残るお金をベースにした利回りです。
キャッシュフロー利回りの計算式は以下の通りです。
キャッシュフロー利回り(%) =(年間家賃収入 - 経費 - ローン返済額) ÷ 自己資金 × 100
例えば、ローン返済額が年間50万円だった場合、以下のように計算されます。
(120万円 - 30万円 - 50万円) ÷ 500万円 × 100 = 8%
キャッシュフロー利回りを重視することで、実際の手元資金を増やす戦略を立てることができます。

表面利回りとは?不動産投資の簡単な計算方法

表面利回り(グロス利回り)は、不動産投資の最も基本的な指標であり、投資物件の収益性を簡単に判断するために使われます。
しかし、表面利回りだけで投資判断をするのは危険です。
ここでは、表面利回りの計算方法やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
表面利回りの計算式
表面利回りの計算式は次の通りです。
表面利回り(%) =(年間家賃収入 ÷ 物件価格) × 100
例えば、以下の条件の物件があるとします。
- 物件価格:3,000万円
- 月額家賃:15万円
- 年間家賃収入:15万円 × 12ヶ月 = 180万円
この場合、表面利回りは次のように計算されます。
180万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 6.0%
この計算は非常にシンプルで、物件価格と家賃収入さえ分かればすぐに求めることができます。
表面利回りのメリットとデメリット
表面利回りを活用することで、投資物件の収益性を素早く判断できますが、いくつかの注意点もあります。
メリット
- 計算が簡単:物件価格と年間家賃収入が分かれば、すぐに算出できる。
- 物件の比較が容易:異なる物件の収益性を大まかに比較するのに適している。
- 初心者でも理解しやすい:基本的な指標なので、不動産投資の入門として利用しやすい。
デメリット
- 経費を考慮していない:管理費、修繕費、固定資産税などのコストが反映されていないため、実際の収益とは異なる。
- 空室リスクが考慮されていない:家賃収入が常に得られる前提で計算されるため、空室時の影響を加味できない。
- 物件の将来価値を反映していない:建物の老朽化や市場の変動など、長期的な要素は考慮されていない。
表面利回りを活用する際の注意点
表面利回りは便利な指標ですが、投資判断の唯一の基準としてはいけません。
以下の点に注意しましょう。
- 実質利回りと併せて評価する:表面利回りだけでは正確な収益性が分からないため、経費を差し引いた実質利回りも考慮する。
- エリアごとの相場をチェックする:同じ表面利回りでも、立地や将来の賃貸需要によって収益性が大きく異なる。
- 短期ではなく長期的な視点で考える:一時的な利回りの高さに惑わされず、将来的なリスクや収益の安定性を見極める。

実質利回りとは?不動産投資の正確な収益評価

実質利回り(ネット利回り)は、物件の運用にかかる経費を考慮した上で計算される利回りです。
表面利回りよりも現実的な収益性を示すため、より正確な投資判断が可能になります。
実質利回りの計算式
実質利回りは以下の式で求められます。
実質利回り(%) =(年間家賃収入 - 年間経費) ÷ 物件価格 × 100
例えば、以下のような条件の物件があるとします。
- 物件価格:3,000万円
- 年間家賃収入:180万円
- 年間経費(管理費・修繕費・固定資産税など):50万円
この場合、実質利回りは次のように計算されます。
(180万円 - 50万円) ÷ 3,000万円 × 100 = 4.3%
表面利回りが6.0%だったのに対し、実質利回りは4.3%と低くなります。
これは経費が反映されているためで、実際に得られる収益により近い数値となります。
実質利回りの計算に必要な費用とは
実質利回りを計算する際には、以下の費用を考慮する必要があります。
- 管理費:賃貸管理会社に支払う管理手数料(家賃収入の5〜10%程度が一般的)。
- 修繕費:エアコンの交換、外壁塗装、共用部分のメンテナンスなどの費用。
- 固定資産税・都市計画税:物件を所有する際に毎年支払う税金。
- 火災保険・地震保険:万が一の事故に備えるための保険料。
表面利回りとの違いを理解する
表面利回りと実質利回りの違いを理解することは、不動産投資の成功に不可欠です。
主な違いは以下の通りです。
- 表面利回り:単純な家賃収入を基に算出し、物件の収益性を素早く判断できる。
- 実質利回り:経費を差し引いて計算し、より現実的な収益を示す。
不動産投資を行う際には、表面利回りだけでなく、実質利回りをしっかり把握し、経費を加味した上で投資判断をすることが重要です。

キャッシュフロー利回りとは?不動産投資の収益性を深掘り

キャッシュフロー利回りは、不動産投資において最も現実的な収益性を示す指標です。
実質利回りが経費を考慮した利回りであるのに対し、キャッシュフロー利回りはさらにローン返済額を考慮し、投資家の手元に実際に残るお金を基に計算されます。
この指標を活用することで、長期的な運用戦略を立てやすくなり、資産形成に役立ちます。
キャッシュフロー利回りの計算式
キャッシュフロー利回りは以下の式で求められます。
キャッシュフロー利回り(%) =(年間家賃収入 - 年間経費 - ローン返済額) ÷ 自己資金 × 100
例えば、以下の条件の物件を考えてみましょう。
- 物件価格:3,000万円
- 年間家賃収入:180万円
- 年間経費(管理費・修繕費・固定資産税など):50万円
- 年間ローン返済額:100万円
- 自己資金(頭金):500万円
この場合、キャッシュフロー利回りは次のように計算されます。
(180万円 - 50万円 - 100万円) ÷ 500万円 × 100 = 6.0%
この6.0%が、投資家の手元に実際に残る資金の利回りとなります。
キャッシュフローを増やすためのポイント
キャッシュフローを増やすことは、不動産投資を成功させるために非常に重要です。
以下のポイントを意識することで、より多くの収益を得ることができます。
- 家賃を適正に設定する:周辺の市場調査を行い、適正な家賃設定をすることで収益を最大化する。
- 空室率を下げる:入居者が長く住み続けられるように、物件の管理やリフォームを適切に行う。
- 管理費・修繕費を抑える:定期的なメンテナンスを行い、大規模な修繕が必要になる前に対策をする。
- 低金利のローンを活用する:金利の低い金融機関を選ぶことで、ローン返済額を抑える。
- 税金対策を行う:減価償却を活用し、税負担を軽減することで手元に残るキャッシュを増やす。
キャッシュフロー利回りを重視する理由
キャッシュフロー利回りを重視することで、不動産投資のリスクを抑えながら、安定した収益を確保することができます。
特に、以下のようなメリットがあります。
- 長期的な資産形成が可能:毎月のキャッシュフローを安定させることで、長期的に不動産を運用できる。
- リスクの低減:ローン返済後に手元に残るお金がしっかり確保できるため、不測の事態に対応しやすい。
- 次の投資につなげられる:キャッシュフローが安定すれば、新たな物件購入のための資金を貯めやすい。

不動産投資の利回り計算に影響する要因とは?

不動産投資の利回りは、さまざまな要因によって変動します。
特に以下の要因が利回りに大きな影響を与えるため、事前にしっかりと分析することが重要です。
物件価格と家賃のバランス
利回りの計算は、基本的に「年間家賃収入 ÷ 物件価格」で求められます。
そのため、物件価格が高くなると利回りは下がり、逆に家賃が高ければ利回りは向上します。
しかし、家賃を無理に高く設定すると入居者が集まりにくくなり、空室リスクが高まるため、適正なバランスを保つことが重要です。
空室率と稼働率の影響
不動産投資では、空室率が高くなると収益が低下し、利回りも下がります。
特に単身向けの賃貸物件は入居者の入れ替わりが激しく、空室リスクを考慮する必要があります。
対策としては、以下のようなポイントが挙げられます。
- 立地の良い物件を選ぶ:駅近や商業施設が充実しているエリアの物件は空室リスクが低い。
- 物件の魅力を高める:リノベーションや設備の充実により、競争力を高める。
- ターゲットを明確にする:ファミリー向け、学生向けなど、需要のある層に合った物件を選ぶ。
維持費や管理費の影響
不動産投資では、管理費や修繕費、固定資産税などの経費が発生します。
これらの経費が多いほど、実質利回りが低下するため、コスト管理が重要です。
以下のような方法で維持費を抑えることができます。
- 管理会社を比較する:管理費用が高すぎないか、複数の管理会社を比較してみる。
- 計画的な修繕を行う:大規模な修繕が必要になる前に、こまめなメンテナンスを行う。
- 税制優遇を活用する:固定資産税の軽減措置など、節税対策をしっかり行う。
税金やローン金利の影響
不動産投資には固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。
また、ローンを利用する場合は、金利の変動によって返済額が増減し、キャッシュフローに影響を与えます。
金利の影響を抑えるためには、以下のような対策が有効です。
- 低金利の融資を選ぶ:複数の金融機関を比較し、最も有利な条件のローンを選択する。
- 繰り上げ返済を活用する:余裕がある場合は繰り上げ返済を行い、利息負担を軽減する。
- 金利タイプを選ぶ:固定金利と変動金利の違いを理解し、リスクに応じた選択をする。

不動産投資の利回り計算を活用した投資判断のポイント

不動産投資において、利回りは非常に重要な指標ですが、それだけに頼るのは危険です。
利回りを適切に活用しながら、その他の要素も考慮して投資判断を行うことが成功の鍵となります。
ここでは、利回り計算を投資判断に活かすためのポイントを解説します。
利回りだけでなく総合的な判断が重要
利回りの数値が高いからといって、必ずしも良い投資物件とは限りません。
利回り以外の要素も考慮することで、より確実な投資が可能になります。
総合的な判断を行うために、以下の点に注意しましょう。
- 物件の立地:駅からの距離、周辺の施設、将来的なエリアの発展性などを考慮する。
- 物件の築年数:築年数が古いと修繕費がかさむため、収益性に影響を及ぼす可能性がある。
- 市場の需要:ターゲットとなる入居者層(単身者・ファミリー・学生など)に需要があるかを確認する。
- 出口戦略:将来的に売却しやすいか、またはリノベーションなどの価値向上策があるかを考える。
エリアごとの相場を把握する
不動産投資では、物件があるエリアの相場を正しく理解することが重要です。
同じ表面利回りでも、エリアによってリスクが大きく異なります。
エリア選びの際には、以下のポイントを確認しましょう。
- 家賃相場:周辺の類似物件と比較し、適正な家賃が設定できるかを確認する。
- 人口動態:人口が増加しているエリアは賃貸需要が高まりやすい。
- 開発計画:再開発プロジェクトや新駅の開発など、将来的な価値向上の可能性を調べる。
- 競争率:同じエリアに競合する物件が多すぎると、空室率が高くなるリスクがある。
長期的な運用計画を立てる
不動産投資は短期的な利益を追求するものではなく、長期的な視点で運用することが重要です。
そのためには、しっかりとした計画を立てる必要があります。
長期的な運用計画を立てる際には、以下の点を考慮しましょう。
- 資金計画:自己資金とローンのバランスを考え、無理のない投資を行う。
- 修繕計画:築年数に応じた修繕スケジュールを組み、大規模な修繕費を計画的に積み立てる。
- 出口戦略:売却時期や売却方法を事前に想定し、最適なタイミングで売却できるよう準備する。
- キャッシュフロー管理:突発的な支出に備え、十分な資金を確保する。
不動産投資の利回り計算を正しく行うための注意点

利回り計算を活用することで、不動産投資のリスクを抑えながら、より確実な収益を得ることができます。
しかし、計算を誤ると誤った投資判断につながる可能性があるため、注意点を押さえておきましょう。
表面利回りに頼りすぎない
表面利回りは計算が簡単な指標ですが、実際の収益性とは異なることが多いため、これだけで投資判断をするのは危険です。
- 実質利回りを確認する:管理費や修繕費などのコストを考慮し、より正確な収益を把握する。
- キャッシュフローを計算する:ローン返済後に手元に残るお金を確認し、赤字にならないかチェックする。
経費やリスクをしっかり計算する
不動産投資では、さまざまな経費が発生します。
これらを見落とすと、実際の利回りが大幅に下がる可能性があります。
- 維持管理費:管理会社に支払う手数料や共用部分のメンテナンス費用。
- 固定資産税・都市計画税:毎年支払う必要がある税金。
- 修繕費:設備の劣化による修理やリフォーム費用。
- 空室リスク:一定期間、家賃収入が得られない可能性。
市場の変動を考慮する
不動産市場は景気や人口動向によって変動します。
利回りが良く見える物件でも、市場の変化によって収益が低下することがあります。
- 経済状況をチェックする:金利の変動や不動産市場の動向を把握する。
- 地域の発展計画を調べる:再開発やインフラ整備が進むエリアは将来的に価値が向上する可能性がある。
- 空室率の推移を確認する:長期的に安定した賃貸需要があるかを見極める。
まとめ|不動産投資の利回り計算で収益性を正しく評価

不動産投資において、利回り計算は物件の収益性を評価するために欠かせない指標です。
しかし、単純な表面利回りだけでは正確な収益を把握できません。
実質利回りやキャッシュフロー利回りも併せて考慮し、総合的な判断を行うことが重要です。
投資判断を行う際には、以下のポイントを押さえましょう。
- 表面利回りだけでなく、実質利回りやキャッシュフロー利回りを計算する。
- 物件の立地や市場の需要、将来の発展性を確認する。
- 空室率や管理費、修繕費などのコストをしっかり考慮する。
- 長期的な視点で運用計画を立て、安定した収益を確保する。
不動産投資は慎重な判断と継続的な管理が求められます。
本記事の内容を参考に、賢く投資を行い、安定した収益を得られるようにしましょう。

